カリキュラムが完成して、いよいよ各レクチャーの中身を作る段階に入ったとき、多くの方が最初に悩むのが「スライドをどう作ればいいか」「台本は書くべきか」という問題です。
先に結論をお伝えします。スライドはデザインの美しさより、内容の伝わりやすさが9割です。
そして台本は、「全文書く」か「書かない」かの二択ではなく、自分に合ったスタイルを選ぶことが大切です。
僕はUdemyでベストセラー講座を複数公開し、Udemy Businessにも選出されていますが、スライドはCanvaで作ったシンプルなものです。プロのデザイナーに依頼したことは一度もありません。それでもコースの評価は高い。
なぜなら受講生が求めているのは「洗練されたデザイン」ではなく「分かりやすい説明」だからです。
この記事では、Udemyコースのスライドと台本の作り方を、具体的な設定値やテンプレートとともに解説します。
スライド作成の基本:見た目より「伝わるかどうか」
Udemyのスライド資料について、最も重要な考え方からお伝えしていきます
デザインの凝りすぎは逆効果
スライドを作るとき、「もっときれいにしなきゃ」「プロっぽいデザインにしなきゃ」と思う方は多いです。しかし、Udemyの受講生はスライドのデザインを見に来ているわけではありません。
「分かりやすく学べること」を求めています。
実際に、Udemyで高評価を得ているコースのスライドを見てみると、意外とシンプルなものが多いことに気づくはずです。白背景に黒文字、ポイントごとに色分け、図解は必要最低限。その程度のスライドで、受講者数が数万人に達しているコースはいくらでもあります。
僕の基準は「デザインに90%のエネルギーを割くのではなく、内容の伝わりやすさに90%を割く」というものです。
具体的に言えば、スライドに時間をかけるべきポイントは次の3つに絞られます。
- 文字が読みやすいか(フォントサイズ、色のコントラスト)
- 情報量が適切か(1スライドに詰め込みすぎていないか)
- 視覚的に構造が伝わるか(階層関係や順序が分かるか)
この3つが押さえられていれば、アニメーションやグラデーション、装飾的な画像は不要です。
Canvaで十分。具体的な設定値
スライド作成ツールは何でも構いませんが、僕がおすすめするのはCanvaです。
実際、ほぼ全てのスライド資料をCanvaの既存のテンプレートを活用して作っています。Udemyコースのスライドを作るには十分な機能があり、テンプレートが豊富で、デザインに詳しくない方でもそれなりの見た目に仕上がります。
Udemyコースのスライドを作る際の具体的な設定値をお伝えします。
- スライドサイズ:1920 x 1080ピクセル(16:9)
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Udemyの動画は16:9のアスペクト比が標準です。Canvaでプレゼンテーションを作成すると自動的にこのサイズになりますが、念のため確認してください。PowerPointやGoogleスライドでも同じサイズに設定します。
- フォントサイズ:本文は45px以上
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Udemyの受講生はPCだけでなく、タブレットやスマートフォンでも受講します。小さい画面でも文字が読めるよう、本文のフォントサイズは最低45px、できれば50px以上を確保してください。見出しは60px以上が目安です。
「大きすぎるのでは?」と思うかもしれませんが、スライドを動画として見た時にどう思うかを体験してみてください。特にスマートフォンで再生したときのことを考えると、このくらいのサイズでちょうどいいのです。
- フォントの選び方
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日本語フォントは読みやすさを最優先にします。Canvaなら「Noto Sans JP」、PowerPointなら「メイリオ」や「游ゴシック」がおすすめです。明朝体よりもゴシック体のほうが画面上では読みやすい。
英数字を含む場合は、日本語フォントに合うものを選ぶか、あまり気にせずデフォルトのままでも問題ありません。フォント選びに30分以上悩むのは、時間の使い方として効率が悪いです。
- 配色:3色以内に抑える
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背景色、メインの文字色、アクセントカラーの3色以内に収めましょう。白背景に黒文字、ポイント部分に青系のアクセントカラー。これだけで十分見やすいスライドになります。色を増やすほど統一感がなくなり、視認性が下がります。
スライドの枚数と情報量
1つのレクチャー(5〜15分)に対して、スライドの枚数は10〜20枚が目安です。30秒〜1分に1回のペースでスライドが切り替わるイメージです。
1枚のスライドに載せる情報は、ポイント1〜3個に絞ってください。1枚のスライドに5個も6個も箇条書きを並べると、受講生はどこを見ればいいか分からなくなります。
「このスライドで伝えたいことは何か」を1つだけ決めて、それを伝えるために必要な最低限の情報だけを載せる。この意識を持つだけで、スライドの質は大きく変わります。
台本の作り方:自分に合ったスタイルを選ぶ
スライドの次に悩むのが「台本をどこまで書くか」です。ここは講師によって正解が異なるので、3つのスタイルをご紹介します。自分に合ったものを選んでください。
3段階の台本スタイル
スタイル1:箇条書きメモ方式
各レクチャーで話すポイントだけを箇条書きにしておき、実際の話し方はその場で自由に。最も自然な語り口になるスタイルです。
こんな方に向いています。
- 話すこと自体に慣れている
- 台本があると棒読みになってしまう
- 自分の言葉で話すほうが得意
箇条書きメモの例(Notion入門コースの場合):
レクチャー:ページの作り方
- Notionの「ページ」の概念を説明(ファイルとフォルダの違いとの対比)
- 新規ページの作成手順(3ステップ)
- ページ内にサブページを作る方法
- アイコンとカバー画像の設定
- 注意点:ページが増えすぎたときの整理法に触れる
この方式の場合、各レクチャーの最初と最後の一文だけは決めておくとスムーズです。出だしが決まっていれば話し始めやすいし、締めが決まっていれば着地が安定します。
スタイル2:詳細台本方式
話す内容をほぼすべて文字に起こしておく方式です。「えーと」や「あのー」が少なくなり、論理的に整理された説明ができます。
こんな方に向いています。
- 人前で話すことに慣れていない
- 収録で緊張してしまう
- 日本語以外を母語とする方
ただし、詳細台本には大きなデメリットがあります。読み上げると棒読みになりやすい。受講生は「読まされている」感覚を敏感に感じ取ります。
対策としては、台本を書いた後に3回は声に出して読み、自然に聞こえるまで言い回しを調整することです。書き言葉と話し言葉は違うので、「ですが」を「でも」に変える、長い文を2つに分ける、といった調整が必要になります。
スタイル3:キーフレーズ方式(僕のおすすめ)
箇条書きメモと詳細台本の中間です。各ポイントについて「この言い回しで伝える」というキーフレーズだけを決めておき、つなぎの部分は自由に話す方法。初めの言葉さえ用意してれば意外と話せるものです。
こんな感じです:
レクチャー:ページの作り方
[導入] 「Notionの最も基本的な単位が『ページ』です。
WordのファイルやGoogleドキュメントに近いものだと思ってください。」
[手順] 「左サイドバーの『新規ページ』をクリック→タイトルを入力→
これだけでページの作成は完了です。」
[応用] 「ページの中にページを作れる、これがNotionの特徴です。
フォルダのような階層構造を自由に組めます。」
[締め] 「次のレクチャーでは、作ったページの中に実際にコンテンツを
入れていきます。」
キーフレーズ方式は、棒読みを防ぎつつ、伝えるべき内容を漏らさない。バランスの取れた方法だと思います。慣れるまではこのスタイルがおすすめです。
ChatGPTを活用した台本の下書き
台本作成にChatGPTを活用するのも有効な方法です。ゼロから全部自分で書くより、まずChatGPTに下書きを作ってもらい、それを自分の言葉に直していくほうが効率的です。もちろん他の生成AIでも同じです。
こんな感じでプロンプトを準備してみてください。
あなたはUdemyのオンライン講座の台本ライターです。
以下の条件で、1つのレクチャーの台本を作成してください。
【コーステーマ】Notion入門
【レクチャータイトル】ページの作り方と基本操作
【レクチャーの長さ】8分程度
【対象者】Notion未経験の会社員
【このレクチャーのゴール】新規ページの作成、サブページの作成、
アイコン・カバー設定ができるようになる
【トーン】親しみやすいが、だらだらしない。です・ます調。
以下の構成で台本を作ってください:
1. 導入(30秒):このレクチャーで学ぶことの概要
2. 概念説明(1分):Notionの「ページ」とは何か
3. 実演(5分):画面を見せながらの操作手順
4. まとめ(30秒):ポイントの振り返りと次のレクチャーへの接続
生成AIが出力した台本をそのまま使うのはおすすめしません。必ず自分の言葉に書き直してください。
AIが生成した文章はどうしても「いかにもAIっぽい」言い回しが入ります。あなた自身の語り口に変換する作業は必須です。
このように、ChatGPTは「ゼロから作る」よりもたたき台を作る用途で使うのが効果的です。
資料作成でやりがちな4つの失敗パターン
スライドと台本の作り方を解説してきましたが、ここでコースクリエイターの育成経験から、よくある失敗パターンを4つ共有します。
失敗パターン1:完璧なスライドを目指して手が止まる
「もっときれいに」「もっとプロっぽく」と追求し続けて、いつまでも撮影に進めない。これは非常によくあるパターンです。
繰り返しますが、スライドは80点で十分です。Udemyではコース公開後にスライドを差し替えることもできます。最初から100点を目指すのではなく、まず80点で完成させて、受講生のフィードバックを受けてから改善する。この順番のほうがはるかに効率的です。
失敗パターン2:1枚のスライドに情報を詰め込みすぎる
「せっかくだから」とあれもこれもと1枚に詰め込んでしまう。特に、紙の資料やプレゼンに慣れている方に多い傾向です。
Udemyのレクチャーはスライドを何枚使っても構いません。1ポイントにつき1スライドくらいの気持ちで、惜しみなくスライドを分割してください。情報密度が低いスライドのほうが、動画として見たときに圧倒的に分かりやすいです。
失敗パターン3:台本を棒読みしてしまう
詳細台本を用意した方がやりがちな失敗です。台本を読み上げることに意識が行き、受講生に「語りかけている」感覚がなくなる。
対策は2つあります。1つは先述の通り、声に出して読む練習を重ねること。もう1つは、台本の方式を変えてみること。詳細台本で棒読みになるなら、キーフレーズ方式に切り替えるだけで改善することがあります。
失敗パターン4:スライドと話す内容がずれている
スライドには「ポイントA」と書いてあるのに、話している内容が「ポイントB」の説明になっている。受講生は画面を見ながら音声を聞いているので、視覚と聴覚の情報がずれるとストレスを感じます。
これを防ぐには、台本を書くときにスライドの画面を横に置いて確認する習慣をつけてください。「今このスライドが表示されている状態で、この話をしていて自然か?」を常にチェックしながら台本を仕上げます。
実践のステップ:明日からやるべきこと
ここまでの内容を実践に移すために、具体的なアクションプランをまとめます。
ステップ1:Canvaでスライドテンプレートを1枚作る
まず1枚だけ、自分のコース用のスライドテンプレートを作ってください。背景色、フォント、フォントサイズ、アクセントカラーを決めて固定する。もしくは既存のテンプレートからお気に入りを見つけてもOKです。
この1枚をコピーして全スライドを作っていけば、統一感のあるスライドが簡単にできます。
設定値のまとめ:
- サイズ:1920 x 1080px
- フォント:Noto Sans JP(またはメイリオ、游ゴシック)
- 本文サイズ:45px以上
- 見出しサイズ:60px以上
- 配色:3色以内(背景、文字、アクセント)
ステップ2:最初の3レクチャー分のスライドを作る
全レクチャーのスライドを一気に作ろうとすると挫折します。まず3レクチャー分だけ作ってみてください。3レクチャー分を作る過程で、自分のペースや1枚あたりにかかる時間が分かります。
ステップ3:台本のスタイルを試して選ぶ
3つのスタイル(箇条書きメモ・詳細台本・キーフレーズ)のうち、最初のレクチャーで1つ試してみて、実際に声に出して読んでみてください。「自然に話せる」と感じるスタイルを採用しましょう。
ステップ4:1レクチャーだけ撮影してみる
スライドと台本ができたら、1レクチャーだけ実際に撮影してみてください。完成度は問いません。やってみることで、「ここのスライド、もう1枚追加したほうがいい」「この部分の台本が長すぎた」といった改善点が具体的に見えてきます。
この「まず1本やってみる」が何よりも重要です。頭の中で考えているだけでは見えない課題が、実際にやると山のように出てきます。でもそれは悪いことではなく、改善の材料が見つかったということです。
まとめ:80点のスライドと台本で、まず撮影に進もう
この記事では、Udemyコースのスライドと台本の作り方を解説しました。
スライドは、デザインの凝り具合よりも「文字の読みやすさ」「情報量の適切さ」「構造の伝わりやすさ」の3点が大切です。
Canvaで1920x1080px、フォント45px以上、配色3色以内。このルールを守るだけで、受講生に見やすいスライドになります。
台本は、箇条書きメモ・詳細台本・キーフレーズの3つのスタイルから自分に合ったものを選ぶ。ChatGPTでたたき台を作り、自分の言葉に書き直すのも効率的な方法です。
そして何より大切なのは、80点で先に進むことです。スライドも台本も、公開後に改善できます。最初から100点を目指すことに時間をかけるより、80点で撮影に進み、受講生のフィードバックをもとに磨いていくほうが、結果的に良いコースになります。
スライド・台本の作成に取りかかる前に、全体像を押さえておきたい方へ
無料で受け取れる特典セットには、オンラインコース制作の企画書テンプレートが含まれています。カリキュラム全体を見渡した上でスライド・台本に取りかかると、各レクチャーの役割が明確になり、資料作成の方向性が定まります。


